社会保険労務士事務所

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コラム

column

2025.05.07

兼務役員に就任した場合の注意点は?

Q:兼務役員に就任させようと思う社員がいます。

 労務管理上の位置づけや、労働者としての扱い、給与や社会保険の取り扱いなど、

 どのようになりますか?

A:兼務役員とは、会社の役員でありながら、従業員としての業務にも従事している者を指します。
たとえば、

部長や工場長、店長などの職務を担いながら、取締役などの役員に就任しているケースが該当します。

■ 労務管理上の位置づけ

兼務役員は、形式上は役員であるものの、実態として従業員と同様の業務に

従事している場合は、労働者としての側面も併せ持ちます。


したがって、労働者性の有無は、

実際の勤務実態(指揮命令関係、勤務時間の拘束、賃金の支払い方法など)により判断されます。

■ 労働者としての扱い(雇用保険・労災保険)

【雇用保険】
原則として、役員は雇用保険の被保険者にはなれません。

しかし、以下のすべての要件を満たす兼務役員であれば、

雇用保険の被保険者となることが可能です。

  • 代表権や業務執行権を持っていない
  • 就業規則が適用され、勤怠管理がされている
  • 役員報酬よりも従業員としての給与が多い

このような場合、ハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」などの書類を提出し、

審査を経て雇用保険の資格取得が認められます。


必要な添付資料には、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、就業規則、

定款、登記事項証明書、決算書の役員報酬明細などがあります。

■ 給与の取り扱い

兼務役員に支払われる報酬は、以下の2つに分けて管理する必要があります。

  • 役員報酬:取締役等の役員としての報酬。労働保険料の算定対象外。
  • 給与(賃金):従業員としての業務に対する給与。労働保険料の算定対象。

労働保険料(雇用保険・労災保険)は、従業員としての給与部分のみを対象として計算します。

■ 社会保険(健康保険・厚生年金保険)

社会保険については、すでに被保険者である従業員が役員に就任した場合、

引き続き被保険者となるため、特段の手続きは不要です。

以上のように、兼務役員は「役員」と「労働者」の両面を持つため、

実態に応じた適切な労務管理と保険手続きが求められます。

給与の区分管理や保険料の算定においては、役員報酬と従業員給与を明確に

分けて取り扱うことが重要です。