社会保険労務士事務所

エムピーティスコルタオフィス

MPT Scorta Office

コラム

column

2024.04.03

屋号付き口座を給与振込先にできますか?

Q:弊社の従業員で個人事業主として副業を行う者がいます。(会社は副業を許可制にして

  おり該当の従業員も許可を得ております)

  今回、その者から給与振込口座を個人の口座ではなく屋号の付いた

  個人事業主としての口座に変更できるかと質問がありました。

  会社としてどのように対応すれば良いでしょうか。

A:結論としては、屋号の付いた個人事業主としての口座への振り込みは、

 労働基準法24条「賃金支払い5原則」における直接払いの原則の観点から避けるべきと考えます

 直接支払いの原則の趣旨は、従業員様への給与支払いにおける中間搾取を排除し、

 労務の提供を行った従業員様本人の手に給与の全額を帰属させることにあり、

 万が一、原則に反した場合には会社側に罰金30万円が科せられます。

 口座振込の場合、給与振込口座は従業員様ご本人名義の口座であって

 ご本人様以外の方は使わない口座である必要があります。

 また、その口座がご本人様ご自身の口座か否かは、ご本人様の申し出によって判断され、

 仮にご本人様の口座ではなかった場合にまで会社がその責任を負うことにはなりません。

 ただ、今回の屋号付き口座については、外形上、ご本人様の口座か否かの疑義が

 生じうる可能性を捨てきれないと考えます。

 また、個人事業の規模によっては、ご本人様以外の方が資金を移動させる場合も

 あると思いますので、直接払いの原則からは屋号付き口座は避けるべきと考えます。

 もし、従業員様がどうしても屋号付き口座を給与振込口座に指定したいと仰る場合には、

 以下の方法によりご本人様以外の方による引き出しがないことを

 証明していただくなどが必要と考えます。

・開業届や確定申告の控え、納税証明書などで口座名義の屋号部分を確認

・マイナンバーカードなどの身分証明書で口座名義の個人名部分確認

・ご本人様以外の方が引き出しを行わないとする合意を書面で得る

 しかし、上記の対応は、ご本人様は自身の経済状況に係る個人情報を一部、

 会社に提供することになり、貴社もその確認や管理を行うことになり、

 双方にとって負担が生じます。

 また、将来にわたって法人になるかもしれません

 その為やはり屋号付き口座は会社として受け入れず、就業規則で採用時の提出書類、

 もしくは賃金規程に「本人名義の口座」を原則とすることの趣旨を簡単に追記し、

 詳細は社内規定等に定めるという運用が良いと考えます。